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みえないもの

 もう12年も前になるが、一念発起してマンションを購入した折に、記念に残るものが欲しくてクラシックギターを購入した。よくよく考えれば、金銭感覚が麻痺していたのだろう。今から考えると、よくもまあこんなものを買ったものだと呆然とする。どういう素性のものか、情報の少なさもあって、未だによく調べたことがない。ただし、音は抜群にいい。表は松、裏・側はインディアンローズウッド、こんな見事な材はもうどこにも残っていないと思わせるくらい美しい柾目である(最近の裏板はココボロが多いと聞く)。すでにワシントン条約により規制されているハカランダ(Brazilian Rosewood)ではないが、音量も申し分なく、ボディのサイズに似合わない芯の通ったクリアな音が身上だ。また、外見がシンプルかつ小顔、胴のバランスが絶妙で、なかなかどうして、見た者の視線を惹きつけるナイスバディなのである。

 私の弟が所持するギターは見事な柾目のハカランダである。うっすらと緑色がかった黒い縞が高級ギターであることを誇示している※。私はハカランダフェチではないが、見ているとなかなか美しいもので、ほれぼれする。ハカランダには独特の芳香がある。それがバラに似ているのでローズウッドと呼ばれる。ブラジル原産のマメ科の巨木だ。乾くと、堅く粘りがあり、非常に重硬な材となる。インディアンローズウッドは近種の木であるが、ハカランダとは違った香りで間違うことはない。つい先日、帰省した折に弟のギターを借りたのだが、ふと鼻の奥に懐かしさを感じた。昔はどこの楽器屋でもこの木の香りがしたものだ。お金もないのに楽器屋へ通って、ショウウィンドウ越しにため息をついていた頃がなにやら懐かしく、照れくさく思い出される。

 人は内面がすべてで、外見の優劣など問題にはならない、と教えられてきた。今にして思えば、自信がなく後ろへ下がり気味だった私を叱咤激励する言葉だったと思う。しかし、それは少々語弊があり、やっぱり外見に努力をしない者は、どんな偉い人だって人として良く見えない。きれいなシャツを着る、靴はちゃんと磨く、サイズのあっていないスーツをだらしなく着ない、無精ひげはちゃんと剃る等々の外的要因は基本だが、内面からにじみ出る雰囲気がその人の見栄えすら変えてしまう、ということに気がついている人は少ない。高級品というのは、値段だけではなく、高級である理由に比例した、なにか気品(質感)のようなものをまとっているのである。

 私の自慢の一品には、少々安物の糸巻がついている。いずれはSLOANE(スローン)というメーカの糸巻で飾ってやろうと考えてはいるのだが、いかんせん、しがないサラリーマンの台所状況は悲しい。メモリの増設やCPUの交換と違い、その実利たるや駅のトイレットペーパーほどに薄い。おっと、来月には後輩の結婚式があるんだっけ。ご依頼通り、お祝いの唄を一曲歌わせていただくので、披露宴はできれば私だけにして、うちの女房は特別ご招待にするか、呼ばないで欲しいのだが…。

※希少価値が高いからといって音がいいわけではないのが楽器のおもしろいところである。私のギターと彼のギターの間には値段相応の「音質」という目に見えない格差が存在する。ちなみに、ハカランダを使用するギターは、国外へ持ち出す場合には、CITESの証明書を取得する必要があるそうだ。

Photo

Sascha Nowak サッシャ・ノバック、ザーシャ、ノワックいろいろな表記がある。独のギター職人、名工メンヒの弟子である。国内でも取り扱う店はあるが、数が少ない。

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